30年前、焼き物の生産地での出来事。
そこでの出会いが、今の仕事の原点だったような気がします。
車で山間の道をくぐり抜けてたどり着いたのは1件の古い倉庫。
昼間なのに薄暗い倉庫の奥に、新聞紙に包まれて縄紐でくくられた、かたまりの山。
手をかけただけで、新聞紙も縄紐もパラパラとくずれ、中からすすけた食器らしきものが重なって姿をあらわしました。
何だかよくわからないままそれらを次々と出していき、外にある水道の蛇口の下で水をジャージャーと流しながら洗っていったのです。
そこからの驚きと感動は、今でもかなり鮮明な映像として蘇ります。
出てきたのは、真っ白なコーヒーカップ、マグ、ボール、プレートのいろんなサイズ・・・!
時間を忘れて、気が付いたときには先ほど見た山からは想像できない、素敵な白い食器の山、山、山。
その昔、海外輸出向けに量産していた時の在庫だったのです。
メーカーにとっては、その時ほとんど価値のないもので引き取ってもらいたい品物だったのです。
そこから、白い食器屋のスタートです。
その頃の白い食器といえば、ホテルやレストランの業務用という概念でしかなく、一般の家庭で柄の無い真っ白な食器を使うという感覚のない時代でしたが、国内・海外からとことん白だけを集めての店作りをしたのです。店の内装まで白にしてしまいました。
その頃、海外の洋書で見たパリやニューヨークの食器屋さんのとにかく天井に限りなく届くくらい、積み上げられた白い食器のディスプレイに惹かれて真似てみたものでした。
白い食器の良さを広めていくのには、時間も必要でしたが、何よりどんな料理にも合い、丈夫で、収納もしやすく、価格も手ごろな白い食器の良さは一般の家庭にも自然に少しずつ広まっていったように思います。
今では当たり前のように店頭に並んでいる、日本・フランス・ドイツ・イタリア・スウェーデンなどの白い食器にはそんなストーリーがあったのです。